Thursday, November 3, 2011

すぐにでもできること⑥-基本的指導の見直し(教科書本文の内容理解)-

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   高知県の公立高校の英語授業について

        すぐにでもできること⑥

-基本的指導の見直し(教科書本文の内容理解)-

  高知県教育委員会事務局高等学校課 山田憲昭
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高校英語教員の皆様へ
 このシリーズは高知県の公立高校における英語授業の課題を踏まえ,英語教員の皆さんと英語授業や指導法に関する情報交換を行い,平成25年度から高校で始まる新学習指導要領の授業作りをサポートすることを目的としています。
 「基本的指導の見直し」は,日々の授業における様々な場面での基本的な指導について取り上げ,指導事例を紹介しながら,すぐにでもできるという視点で改善策を考えます。今回取り上げるのは「教科書本文の内容理解」です。

1 教科書本文の内容理解
 外国語習得においては,生徒の学習は「理解」→「習熟」→「発展・応用」という流れを通じて,インプットの活動からアウトプットの活動へと進むことが大切です。しかし,多くの高校の英語授業では,「理解」の部分にほとんどの授業時間が使われ,「習熟」「発展・応用」を担う授業が十分に行われていない実態があります。確かに,「理解」の部分,特に「教科書本文の理解」はインプットとして非常に大切ですが,理解した英語(表現)を使ってアウトプットする機会がなければ,「定着」が図れたかをみることは不可能だと言えます。
 このような状況を変えようと,高知県では,高校授業プロジェクトチームが東京学芸大学の金谷憲先生とともに『和訳先渡し授業』を試みました。2001年の全英連・高知大会で発表されたこの試みは,教科書本文の全和訳を最初に生徒に渡すことで,「(内容)理解」にかける時間を最小限にし,「習熟」と「発展・応用」のための授業をちゃんと行うというものでした。肝心なのは,授業を「理解」だけで終わらせないで,しっかり「習熟」,そして「発展・応用」まで進めることです。
 さて,中・高の英語授業のこれからの10年は,新しい学習指導要領の実践という形で進みます。マスコミや保護者は,平成25年度からの高校の英語授業に大いに注目するでしょう。授業は生徒が英語を使う活動が中心となっているか,教員は学習者モデルとして積極的に英語を用いてコミュニケーションを図っているか,授業は4技能をバランスよく育成するものになっているか,シラバスやcan-do listに基づいた指導や評価を行っているか,生徒のパフォーマンスを評価しているかなど,高校の授業はかなり厳しい目で見られるようになると想像できます。しかし,落ち着いて考えてみれば,これらはすべて英語教員の仕事です。学習指導要領は改訂されましたが,私たち英語教員の仕事が変わるわけではありません。

2 指導事例(※議論を焦点化するために,部分的な記述に留めています。)
その①
 教科書本文の英文1文1文について教員が解説を行い,その後個々に生徒を指名して和訳させる。すぐに和訳できない場合は,日本語でヒントを与えるか,別の生徒を指名して答えを引き出す。

その②
 教科書本文に関する英問(5~10問程度)を板書し,生徒にその質問をノートに書かせ,英語で答えを書かせる。生徒を指名して,答えを口頭で言わせるか,板書させて,最後に教員が正しいかどうか確認する。

3 指導事例の課題
その① 
 事実上,授業のゴールが「教科書本文の和訳の完成」になっており,英語によるコミュニケーション能力を総合的に育成することを意図した指導とは思えません。このままでは,生徒に「英文を和訳する力」はある程度身につくかもしれませんが,肝心な英語の4技能はどうなるのでしょうか。時間がないので,「理解」の部分だけしかできないというのは教員の言い訳です。時間がなくても,インプットとアウトプットのバランス・配分を考えることが大切です。学んだことが定着しない,英語が使えないという問題は,生徒のせいではなく,アウトプットの機会を与えないこのような指導の当然の結果だと言えます。

その②
 教科書本文を読んで,内容理解に関する英問・英答を行う活動はよく見られる活動です。しかし,時間配分がうまくできている授業は少なく,かなり無理がある時間配分で授業が行われている場合が多いです。生徒のレベルや質問の種類や数にもよりますが,この活動は「英問を読んで理解し,そしてもう一度本文の英文を読んで英問の答えとなる部分を探し,最後に英問の形式に合わせて答えとなる英語を書く」という,どのレベルの生徒にとっても大変時間がかかるものです。もう少し慎重に活動のねらいや時間配分を考えないと,形式だけの活動になる恐れがあります。

4 改善のためのヒント
その① 
 文法訳読式だけの授業を改め,「理解」→「習熟」→「発展・応用」という流れで授業を構成すべきです。そして,その流れの中に,授業の目標と言語材料に応じて,どのように学習活動,言語活動を組み込んでいくかが教員の腕の見せ所となるでしょう。「理解」の部分については,文法訳読式以外にもたくさんの方法がありますので,積極的にそれらにチャレンジすべきでしょう。
 また,新しい学習指導要領で述べられているように,「生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とする」授業作りに今すぐに取り組む必要があります。生徒の英語によるコミュニケーション能力の育成を図る授業作りを行うため,まずは以下の点を再確認してください。
 ・生徒が英語を使う活動(学習活動・言語活動)が授業の中心となっているか。
 ・教員の役割(学習者モデル,ファシリテーターなど)は適切か。
 ・4技能をバランスよく育成することを意図した指導ができているか。
 ・シラバスやcan-do listに基づいた指導や評価を行っているか。
 ・生徒のパフォーマンスを評価しているか。

その② 
 まず,この活動が「本文を読み,質問を読んで内容を理解し,そしてもう一度本文を読んで答えを探し,最後に質問の形式に合わせて答えを英作する」という大変時間のかかる活動であることを認識することが必要です。このような認識があれば,この活動を分割して実践するという発想も生まれます。
 たとえば,まず本文を読み,質問を読んで内容を理解する」活動,次に「もう一度本文を読んで答えを探す」活動,最後に「質問の形式に合わせて答えを英作する」活動というように,3つの段階(活動)に分割します。そうすることで,生徒がどの段階(活動)でつまずいているのかもわかりやすくなり,次の活動に進むべきかどうか判断できますし,的を絞った事後指導も可能となります。また,特に最後の部分の「答えを書く」という活動は,時間的に個人差が最も大きい部分なので,家庭学習として取り組ませることも一つの手だと思います。

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