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高知県の公立高校の英語授業について
すぐにでもできること④
―基本的指導の見直し(リスニング指導)―
高知県教育委員会事務局高等学校課山田憲昭
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高校英語教員の皆様へ
このシリーズは高知県の公立高校における英語授業の課題を踏まえ,英語教員の皆さんと英語授業や指導法に関する情報交換を行い,平成25年度から高校で始まる新学習指導要領の授業作りをサポートすることを目的としています。
今回からテーマを「基本的指導の見直し」とし,日々の授業における様々な場面での基本的な指導について,指導事例やその事例上の課題などを紹介しながら,すぐにでもできるという視点で改善策を考えてみたいと思います。
1 リスニング指導
母語習得においては,聞く技能は最初に自動的に習得される技能です。聞く技能を活用することなく,話す・読む・書くというその他の技能の習得や向上はありえません。また,第2言語習得においては,「読むこと」と「聞くこと」の両方を通じて,理解可能なインプットを得ることが,「書くこと」「話すこと」というアウトプットの向上につながるとされています。これらから,外国語学習の場面においても,聞く技能の習得や向上は,読む技能と同様,極めて重要であると考えられます。
しかしながら,たとえば日本の高校の英語授業では,読む技能の育成にその指導の比重が置かれているため,聞く技能の育成は質・量ともに後回しにされているように思います。おそらく,聞く技能が母語習得において自動的に身につくものなので,教員はその習得のプロセスを経験的には教室での外国語指導に応用することができないこと,また対象となる外国語の音声現象に着目したリスニング技能習得のための指導力が教員に不足しているということが,後回しになる原因ではないかと思われます。お世辞にも,リスニング指導に十分な時間が費やされ,質的にも十分な指導がなされているとは言えない現状が高校の授業には見られます。
このような現状はすぐにでも改善され,効果的な指導がなされる必要がありますが,そのためには,まず教員が「読んで理解する」「聞いて理解する」という2つのインプットについて,その特徴やプロセスの共通点や相違点などを整理することが大切です。たとえば,「読んで理解する」は語彙を視覚認識することですが,「聞いて理解する」は語彙を聴覚で認識することです。また,実際のコミュニケーションの場面においては,「読んで理解する」ことができない場面では,理解できるまで何度も書かれたものを繰り返し読むのが普通です。一方,「聞いて理解する」ことが必要な場面では,音声情報が次から次へと現れては消えていきますので,瞬間的に理解する必要があります。さもなければ,聞いた直後に質問をするなどして,一度聞くだけでは理解できない情報を補います。このような特徴を十分踏まえたうえで,具体的な指導を考えることが大切です。
「理解可能なインプット」の重要性について異論はないところだと思いますので,以下の指導事例をきっかけにして,皆さんご自身の「リスニング指導」をもう一度見直す必要があるのではないかと思います。
2 指導事例(※議論を焦点化するため部分的な記述に留めます)
・教科書本文や要約文の音声をCDで聞かせながら,空所補充形式でdictationを行わせる。dictationの対象となる空所は,すべて1語で新出語にしている。
・初見のパッセージをCDで聞かせ,内容に関するいくつかの英問を口頭で出題し,答えさせる。
3 指導事例の課題
①「聞くこと」だけで終っている!
単語や内容を聞き取れたかどうか答え合わせをするだけの活動には,大いに改善の余地があります。「聞く」活動を行うことはもちろん大切ですが,「聞く」だけで完結する場面は,実際のコミュニケーションの場面ではほとんど見られません。実際のコミュニケーションの場面では,
聞くこと→理解→話すこと(返事する・質問する等)又は書くこと(メモする等)
というような流れで,「聞く」が「話す」や「書く」へとつながります。このようなつながりが教室での活動にも求められます。
②ただの呪文を聞かせている!
外国語学習は母語習得や第2言語習得とは違いますから,自然に外国語のリスニング力が身につくことはありません。知らない単語・語句・英文は100回聞いても,聞こえるようにはなりません。意味不明の呪文を聞いているに等しいです。
4 改善のためのヒント
① 授業の中に,理解可能な英語をたくさん「聞く」という活動を取り入れることが必要です。またその際,「話す」活動や「書く」活動と統合された活動や場面を設定することで,授業を実際のコミュニケーションの場面に近づけることができるはずです。といっても,3つの技能をいきなり統合的に活用させる場面や活動を設けるのではなく,※の例のように,より小さなステップに分けて,生徒が3つの技能を段階的に活用する場面や活動を設けることをお勧めします。生徒に「できる」を実感させるという意味でも効果があります。
※活動を小さなステップに分けて考え,段階的に実践する場合の例
ステップ1(個人活動1): 聞く(→理解の確認)
ステップ2(個人活動2): 聞く → 書く
ステップ3(ペア活動1): 聞く → 書く → 話す
ステップ4(ペア活動2): 聞く → 書く → 話す → 聞く → 書く
上の例では,ステップ1・2を個人活動,ステップ3・4をペア活動とし,個人かペアか,使う技能はどれかという点に段階(ステップ)を設けました。生徒は少しずつできるようになり,最終的にはできるようになってもらいたい最終ゴールであるステップ4まで長期戦で指導を継続することになります。
なお,今回の最終ゴールであるステップ4は,「海外留学中に,現地の友人から電話があり,一緒に出かけようと誘われる場面において,友人の話を聞き,メモを取り,不明点や聞き逃したことについて友人に質問し,その回答を聞いて,再びメモに追記する」という実際のコミュニケーションの場面から考えたものです。
② 外国語の音声が呪文になっている状態から,いかに脱出させるかが指導のポイントです。言い換えると,「音声としての語彙」が不足している生徒に対して,どのような指導を行うかということです。
聞き取れない原因を,「その語が未知語である」,「その語を正しい音声で学んでいない」,「その語の前後で英語特有の音声現象が起こったために認識できない」のいずれかであると仮定すると,解決の方向が見えてきます。聞いて理解できない語・句・文がある場合には,たとえば,まずそれらを目で確かめて読んで理解した上で,そこに現れている音声現象を耳に覚えさせるという活動が有効です。
前述の3つの原因を解決する方法は,意味ある音として認識できる語彙を増やす指導を,日頃から丁寧かつ意識的に行うことです。またその際,単語・句・文という各レベルにおいて,「聞くこと」と「話すこと」を関連付けて指導することも習慣化すべきでしょう。
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