Saturday, September 24, 2011

すぐにでもできること③-ディベート活動-

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
   高知県の公立高校の英語授業について

 「すぐにでもできること③ -ディベート活動-」

 高知県教育委員会事務局高等学校課 山田憲昭
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
高校英語教員の皆様へ
 このシリーズは高知県の公立高校における英語授業の課題を踏まえ,英語教員の皆さんと英語授業や指導法に関する情報交換を行い,平成25年度から高校で始まる新学習指導要領の授業作りをサポートすることを目的としています。
 今回のテーマはディベート活動です。近年,全国の多くの中高で,ディベートが英語授業で取り上げられています。理由は,使わなければならない4技能が中高での英語授業のゴールと大きく重なっているからです。
 ここでは,ディベート活動を「ある論題に対して,肯定側と否定側の立場に分れ,それぞれの立場の優位性を,第3者であるジャッジや聴衆に伝え,説得するコミュニケーション活動」と定義し,英語4技能のゴールと指導方法について考えてみます。

1 英語力のゴールとディベート活動
 皆さんは,現在皆さんの学校で学んでいる生徒に,高校3年間でどのような英語力を身につけてもらいたいと思っていますか。この質問への答えがスタート地点であり,ディベート活動が高校3年間の英語授業のゴールになりうる理由です。
 仮に,高校3年間で身につけてもらいたい英語力のゴールを,「中学レベルの英語を自由自在に操ることができる力」と考え,以下に4技能別に考えてみました。

******「中学英語を自由自在に操ることができる力」******

【読む技能】
・あるテーマについて書かれた英文(100~400語程度)を,ある程度未知語があっても,とりあえず最後まで一気に読み通すことができる。
・あるテーマについて書かれた,複数のパラグラフからなる英文を読んで,どういうテーマについて書かれているのか理解することができる。
・あるテーマについて書かれた,複数のパラグラフからなる英文を読んで,各パラグラフのトピック・センテンス(主題文)を見つけることができる。
・意見を述べた文と理由を述べた文を見つけ,それぞれの内容を理解することができる。
・事実やデータ等を述べた文を見つけ,その内容を理解することができる。

【聞く技能】
・自然なスピードで話される英語(100-170WPM)を聞き,遅れないで音をつかむことができる。
・相手の話を聞いて,伝えようとしている内容のキーとなる語句を聞き取り,理解することができる。
・相手の話を聞き,理解できないと判断し,その後すばやく適切な対処ができる。

【話す技能】
・相手が読んで理解できるレベルの英語を,正確な発音,適切なリズム・スピードで発話することができる。
・“Read & Look up, Say”を用いて,原稿から目を離して,現行の内容を相手に伝えることができる。
・聞いた内容に関して,不明点,聞き逃した点,興味・関心がある点などについて質問して確認することができる。
・ある語彙や表現を用いて話しても,相手の理解が得られない場合に,伝えたい内容を別の語彙や表現で伝えることができる。

【書く技能】
・話題(テーマ,トピック)を伝える英文を書くことができる。
・賛否等,主張や意見を伝える英文を書くことができる。
・理由や根拠を伝える英文を書くことができる。
・事実やデータ等を正確に伝える文を書くことができる。
・相手の話や質問を聞いて,キーワードなどを簡単なメモに取ることができる。

*****************************
 このように「自由自在に操る」の具体像を考えてみると,中学レベルの英語でもかなりのことができることがわかります。生徒の現状や実態,EFLの環境等を考慮しても,高校3年間の英語学習が終了した時点で,中学レベルの英語を用いて,概ね上記のような力が身につけば十分だと思います。したがって,これら一つ一つの力の統合的・総合的な活用を促す活動であるディベート活動は,高校3年間の英語授業のゴールと考えることができます。
 さて,生徒に具体的なゴールを提示し,そのゴールが達成できるよう様々な支援をおこなうこと,これが英語教員の仕事です。繰り返しますが,目の前の生徒に何ができるようになってもらいたいのですか。この質問に対して,明確な答えを出すことからスタートしましょう。

2 ディベート活動は「すぐにでもできること」?
 堅苦しく考えずに,まずはやってみてください。高知県には,英語のディベート活動を授業や指導に取り入れやすい条件・環境が整っているのですから。
 一つは,英語ディベートを授業に取り入れてきた先生方が多数いらっしゃるということです。これらの先生方は,ご自身の授業で生徒にディベート指導を行い,生徒を大会に引率し,大会では試合のジャッジや運営に携わられ,辛いことも・楽しいことも経験されています。きっと皆さんの相談相手になってくださるはずです。
 もう一つは,高教研英語部会が実施したアンケート調査(2009年実施,有効回答数712名)で,英語ディベートを経験した生徒の約8割が英語ディベートを学んでよかったと考え,「語彙・文法・発音の知識」・「スキル(多面的・論理的に考える力,即時的な対応力,聞く力,書く力,読む力等)」・「社会的知識や関心」・「準備,情報収集,チームワーク」・「興味,関心,意欲」などの向上を実感しているという回答が得られていることです。先生方の労力が十分に報われていると言えるのではないでしょうか。
 さらに,はじめて英語ディベートの指導を始めようと考える先生方を支援する,初心者用の英語ディベート大会Yosakoi Cupがあります。昨年はプレ大会でしたが,今まで一度もディベート大会に出場したことがなかった3校(須崎高校,高知丸の内高校,梼原高校)を含め,計6校から高校1・2年生,9チーム・約30名が参加し,「制服の是否」という論題で1試合12分の英語ディベート試合を行いました。今年は第1回大会として12月18日(日)に高知西高校で開催されます。お題は「海外修学旅行の是否」です。
 このように,先生方の英語教員としての資質はもちろんのこと,全国どこに行っても高知県ほど条件・環境が整ったところはありません。つまり,高知県では高校の先生方がディベート活動を授業や指導に取り入れることが「すぐにでもできること」なのです。

3 簡単なディベート活動ができる力をつける指導方法
 一体どういう方法でディベート活動ができるところまでもっていくか,普段の授業をどのようにディベート活動につなげていくかについては,生徒の英語力の現状や実態等から様々な方法が考えられます。
 ここでは,4技能のうち,特に「聞く・話す」技能を高めるために継続して取り組む「基礎トレーニング」と,ディベートというコミュニケーションの形態に慣れるための日本語による「マイクロ・ディベート」を簡単に紹介します。

(1)基礎トレーニング(毎時間)
①弾丸インプット
 インプットシートを用いて,語彙や英語表現のスピーキングとリスニングを,個人やペアで繰り返すトレーニング活動です。この活動を通じて,英語らしいスピードで正確なQ&Aができることを目指します。
 まず教員がインプットシートの英文のモデル音読を示し,生徒は日本語での意味を確認しながら,Listen&Repeatで正しい発音・アクセント・イントネーションの練習を行います。
 次にペア活動で練習量を確保します。生徒はペアになり,じゃんけんで質問者,回答者を決めます。質問者は,インプットシートの英文(疑問文)を上から下へと質問し,回答者は答えます。質問者も回答者も,正確な発音・イントネーションで,できるだけ速いスピードで,明瞭に発話することができることを目指します。最初はゆっくりと正確に行い,回数を重ねるにつれてスピードを上げていきます。
 1種類のインプットシートは少なくとも4~5回は使い,終わったらファイルにまとめさせます。インプットシートは,時制を変えたり,What,Who,Where,When,Howなどの疑問詞で始まる疑問文を用いて,多彩なバリエーションで作成します。もちろん,ディベートに必要な語彙や英語表現もインプットシートにしてトレーニングします。

<インプットシート例1>
弾丸インプット活動シート(中学レベルの英語表現を用いて)
1 What country do you want to go? / I want to go to( ).
2 What is the capital city of Japan? / It is ( ).
3 What is the capital city of U.K.? / It is ( ).
4 What is the capital city of America? / It is ( ).          
5 What is the capital city of Australia? / It is ( ).
6 What sports do you like best? / I like ( ) best.
7 What food do you like best? / I like ( ) best.          
8 What subject do you like best? / I like ( ) best.
9 How many students are there in your class? / There are ( ) students in my class.
10 How many people are there in Japan? / There are about 120 million people in Japan.
11 How many people are there in Kochi city? / There are about 330,000 people in Kochi city.
12 How many students are there in your school? There are ( ) students in my school.          
14 How many people are there in your family? There are ( ) people in my family.
15 How often do you brush your teeth a day? / Once a day. Twice a day.

Class( ) No( ) Name( )


<インプットシート例2>
弾丸インプット活動シート No.01 (For debate)
1 We agree to the proposition that …   ・・・という論題に賛成です。
2 We disagree to the proposition that …   ・・・という論題に反対です。
3 We can show you two advantages.   2つのADを示します。
4 We can show you two disadvantages.   2つのDAを示します。
5 I'm going to refute AD1.   AD1に反論します。
6 That is not true.   それは本当ではありません。
7 That is not important.   それは重要ではありません。
8 That is not relevant.   それは関係ありません。
9 Our argument is better than theirs.   私たちの議論のほうが彼らより優れています。
10 We can show you an evidence.   証拠を一つ示します。
11 The evidence show that …   その証拠から,・・・だとわかります。
12 Their attack is weak.   彼らのアタックは弱いです。
13 Our attack is strong.   私たちのアタックは強いです。
14 I have a question.   質問が一つあります。
15 We will win this debate.   このディベートは私たちの勝ちです。          
Class( ) No( ) Name(   )


②ペア・トーク
 身近なトピックについて,英語で簡単なやり取りをペアで行う活動です。この活動を通じて,即興でQ&Aができることを目指します。
 生徒はペアを作り,じゃんけんで話し手と聞き手を決めます。話し手は,教員の指示に従い,決められたトピックについて30秒程度英語で話します。たとえば,1文目を教員が“I’m interested in sports.”と指示することで,話し手はその文を用いて話し始めます。聞き手は,注意深くその話を(メモを取りながら)聞き,話のトピックや内容に関連した質問をします。話し手はそれに答えます。これを,役割を交代して繰り返します。さらに,新しいペアを作り,繰り返します。

(2)日本語マイクロ・ディベート
 マイクロ・ディベートとは,3~4名が一組を作り,簡略化された短時間のフォーマットを用いて行うディベート活動です。この活動を通じて,ディベートの目的とルールの概要,ディベーターやジャッジの役割などを理解させ,同時にディベートの意義・面白さを学ばせます。
ここでは,50分授業で行う「我がクラスは教室を自由席にすべし」という論題での日本語によるマイクロ・ディベートの指導事例を紹介します。この論題でのディベートは全国の小中学校で多く実践されていますので,インターネットで検索すべればさらに詳しく知ることができます。



①手順1: 形式・ルール等の説明(15分)
 クラス全体に対して,ハンドアウト等を準備して以下のような内容(形式,フォーマット,ルール等)を説明する。

■形式■
3名1グループ,クラスで10~12グループを作り,3人の机を下のように並べる。各グループで,肯定側1名,否定側1名,ジャッジ1名を決める。4名グループでは,ジャッジを2名にする。







■フォーマット■1試合5分のフォーマットを使用する。
肯定側立論 ―  1分
準備 ― 30秒
否定側立論 ―  1分
準備 ― 30秒
否定側反駁 ―  1分
肯定側反駁 ―  1分 
計      5分

■用語定義■
「自由席」=生徒が各自で自由に決める座席

■プラン(論題を実際に行動に移す際の計画)■
1 朝教室に来た生徒から順に,自分で自由に席を決めることができる。
2 席は,その日の教室の席であり,移動教室は含まない。

■立論■以下のような順で述べる
1 メリット(よい点),デメリット(悪い点)は何か?(2つまで:理由を付けて)
     ↓
2 そのメリット(デメリット)は,どういう過程で発生するのか?
     ↓
3 そのメリットはどれだけ重要か?(そのデメリットはどれだけ深刻か?)

■反論■
相手の議論を「本当でない,重要でない,関係ない」の3つのどれかで反論する。

■ジャッジ■
*どの議論が,「主張+根拠(データ,理由付け)」となっているかどうか。
*立論から反論まで議論が一貫しているかどうか。
*自分の考えは捨てる。「言った事」のみで判定する。

②手順2: 準備(5分)
 3名1グループを作り,3人の机を上図のように並べさせ,各グループで肯定側1名,否定側1名,ジャッジ1名(4名グループでは2名)を決めさせる。

③手順3: 1試合目の実践(10分)
 各グループで準備ができたら,教員が全てのグループで行われる試合のMCとTKを同時に担当し,一斉に試合を進める。全員に,必要ならばメモを取ってもいいことを伝える。フォーマット通り試合を行い,最後に判定時間を1分程度とり,どちらが勝ちか,その理由をジャッジに言わせる。

④手順4: 2試合目,3試合目の実践(20分)
 役割を交代して,(ウ)をもう2回繰り返す。このように同じ論題で3回試合を行い,試合毎に係をローテーションすることで,3名全員が3つの役割(肯定側,否定側,ジャッジ)を経験できる。

 今回は「ディベート活動」をテーマにして,英語4技能のゴールと効果的な指導方法について事例を紹介しながら考えてみました。
「生徒が・・・できるようになる」というゴールを達成するためには,まず教員が「私の生徒は必ず・・・できるようになる」と生徒の可能性を信じること,そしてチャレンジし続けることが何よりも大切だと思います。

0 comments: